普段の生活でなかなか重い腰があがらないが、底地や借地の問題に取り組むきっかけで最も多いのがやはり相続のタイミングです。
以前は相続が発生したタイミングでの相談が多かったが、昨今は相続が発生するかなり前のタイミングでのどうすればいいでしょうかといういわゆる事前相談のほうが増えてきたと感じます。
なぜ底地借地は問題なのかということですが、大枠でいうと以下の2つに大別されます。
それは「お金の問題」と「権利関係の問題」です。
「お金の問題」
- 収益面での低さ(地代を挙げられない)
- 税金の支払い
「権利関係の問題」
- 権利関係の複雑さ
- 当事者が多い
2015年の相続税法の改正により、相続時の基礎控除が下がったため[改正前]5000万円+1000万円×法定相続人数 →[改正後]3000万円+600万×法定相続人数 事実上増税となり、対象となる人も増えました。
そのため、例えば東京都内などの比較的地価の高いエリアにある程度の広さを所有している場合は該当するケースが増えたのです。
また、お金の問題はそれだけではなく、支払う原資についてや、評価についても問題はあります。
支払う原資としては月々の地代もしくは、底地を売却をしてとなりますが、月々の地代については、相続税があがった、土地の地価があがったとしても金額を上げるのはハードルが高いものです。代々住み続けてきた借地人もおり、長年その金額でやってきたとなるとなかなか上げづらいというのが実情だからです。そもそも地代の値上げについては双方の合意が必要なため進まないことが多いのです。
また、底地を売却した場合の売却金額と相続税での評価の乖離もあります。例えば所有権で1億の土地だとして借地割合が60%の土地の場合、底地の相続評価額は
計算式は 相続税評価 = 路線価×(1−借地権割合) (路線価は公示価格の約8割程度なので 1億×8割=8000万 )(借地割合60%だと 借地人60% 底地は残りの40%)なので相続税評価額はおおよそ 8000万×40%=3200万となります。
相続税を評価する際にこの借地権を3200万と評価された底地を実際に売却にだしてみると、流動性の問題やそもそもの資産としての収益性の低さから、おおよそ価格は1割程度になると言われています。ざっくり1000万前後でしか売れないということです。
毎月の地代も低いうえ、思い切って売却してもこの値段で相続税を支払うことになると困るのは必然といえるでしょう。
2つ目は権利関係です。所有権であれば土地と建物でシンプルな場合一人でこの土地と建物のことを決められます。対して底地・借地は上と下で2人、一筆の底地に複数の借地人がいることもあります。加えて相続が発生すれば×人数であっというまに対象者が増えます。借地人が複数人になると同様に地主側も増えていきます。
こうなると、船頭多くして船山上るではありませんが、それぞれの思惑や主張が飛び交い合意に至るのはますます難しくなります。流動化しにくい原因はここにもあるのです。
こういったことを踏まえて対策をするとなれば、早い時期からの準備がなにより重要となってくるでしょう。その理由は時間的な猶予があれば解決策としての選択肢の幅が広がることになるからです。
解決策として、大きくは2つに大別され、底地の「売却」か「保有」となります。
これをさらに具体的手法にまで分解すると「売却」には2つ、「保有」が3つの合わせて5つの解決方法があります。
それでは具体的に見ていきましょう。
[売却] 1 底地を売却
[売却] 2 同時売却
[保有] 3 借地権の地主買い戻し
[保有] 4 等価交換
[保有] 5 地代の値上げ
地主の売却については2つです。「底地単独での売却」と、底地を売却するタイミングと同時に借地権もセットにして売却する「同時売却」という手法です。
保有については3つあります。借地人にお金を払って、借地権を買い戻しをおこないもとの所有権に戻す「借地権の買い戻し」。借地人と地主とでそれぞれもっている借地の一部と底地の一部を交換することで所有権化した土地として各々が保有する「等価交換」。更に底地・借地は継続してそのままだが、契約の条件、主に地代の見直し等を行い適正化をはかる「地代の値上げ」です。
それぞれの置かれている状況により対応は異なってくるため、一つ一つ詳しく説明していこうと思います。