ものがたりで底地借地を学ぶ知るシリーズ
野田誠一(65歳)は、父から相続した底地に、借地人の小川さんが建てた古い木造アパートが残されていた。小川さんはすでに他界しており、アパートは息子の小川浩(56歳)が相続していたが、入居者はとっくにいなくなり、建物だけが放置されていた。地代の振込も、ここ数ヶ月は途絶えがちになっていた。
アパートは築五十年以上で、屋根は崩れ、壁には大きな穴が開いていた。雨が降るたびに雨水が溜まり、近隣からも「危険だ」という声が届くようになっていた。誠一は浩さんに連絡を取り、「建物を撤去してほしい」と申し入れた。しかし浩さんは「撤去する費用がない。それよりも、建物が朽廃したということで借地契約は消滅しているはずだ」と主張した。
誠一は専門家に相談し、「朽廃」という概念について詳しく教えてもらった。「旧借地法が適用される借地契約では、借地上の建物が朽廃した場合、借地権が消滅するという規定があります。ただし、『朽廃』とは、建物が自然の経過によって社会的・経済的効用を失い、建物としての実体がなくなった状態のことを指します。単に老朽化している、傷んでいるという状態とは異なります」
「今回の建物は朽廃に当たりますか」と誠一は聞いた。「実際に判断するのは難しいです。裁判例では、壁や屋根の大部分が崩落し、人が居住できる状態でないことが認められて初めて朽廃とされています。外見が荒廃していても、補修すれば使用できる状態であれば朽廃とは認められません。今回の建物については、現地の状況を専門家が確認した上で判断する必要があります」
「朽廃でないとしたら、誠一さんにできることは何ですか」「まず、浩さんに対して建物の適切な管理を求めることができます。管理が不十分で近隣に損害を与えた場合、建物所有者である浩さんが責任を負います。また、借地権を買い取る交渉をする方法もあります。浩さんが地代を払い続けている場合は、借地契約は有効に継続していますので、強制的に土地を取り戻すことは難しいです」
「地代が払われていない場合はどうですか」「正当な理由なく地代を支払わない状態が続けば、信頼関係の破壊として借地契約の解除が認められる可能性があります。解除するためには、まず相当期間を定めた催告を行い、それでも支払いがない場合に解除通知を出す手続きが必要です。一般的には催告から二週間以上の期間を設けることが求められます」
誠一と浩さんは専門家を交えた交渉を行った。浩さんも「建物を維持する意思も資力もない」と認め、最終的に借地権を誠一に売却する形で話が進んだ。建物の取り壊し費用の一部を差し引いた形で借地権価格が算定され、合意が成立した。
更地になった土地を見渡しながら、誠一は次の活用について考え始めた。長年の問題が解決に向かったことで、肩の荷が下りた気がした。早めに専門家に相談して動き出したことが、最善の選択だったと思った。
旧法借地権における「朽廃」の認定は厳しく、老朽化しているだけでは契約消滅とはならない。問題を抱えた底地は放置せず、専門家に相談しながら粘り強く交渉することが、解決への近道だ。地代の状況も定期的に確認し、不払いが続く場合は早めに法的手続きを検討することが大切だ。
【この記事で学べること】
旧法借地権において「朽廃」とは建物が社会的・経済的効用を完全に失った状態で、単なる老朽化では認められません。地代不払いが続く場合は催告→解除通知という手続きが必要です。問題のある底地は早めに専門家へ相談しましょう。




