『地代の改定請求』継続地代の判定と『差額利息』の計算
清水正之は、長年貸している底地の地代が、周辺の相場に比べて低いままになっていることに気づいた。近隣の取引事例や公租公課の上昇を踏まえ、借地人の岡田さんに地代の値上げを申し入れたが、岡田さんは「急にそんなことを言われても納得できない」と難色を示した。話し合いは平行線をたどり、最終的に正之は地代改定を求める調停を申し立てることにした。長年据え置いてきた地代のままでは、固定資産税の負担すら賄えなくなりつつあったことも、正之が動き出した理由の一つだった。
調停でも折り合いがつかず、正之は訴訟に踏み切ることになった。裁判が長引くことを見越して、正之は弁護士に今後の見通しを尋ねた。「地代の増額請求をめぐる裁判が続いている間、借地人はどう対応することになるのでしょうか」。弁護士は次のように説明した。「借地借家法では、地代の増額について当事者間の協議が調わない場合、増額を正当とする裁判が確定するまでの間、借地人は自分が相当と考える額の地代を支払えば足りるとされています。岡田さんは、裁判の結論が出るまで、従来どおりの地代を払い続けても、それ自体は違法にはなりません」。
正之は複雑な思いを抱いた。「では、こちらの請求が認められないまま、時間だけが過ぎていくということでしょうか」。弁護士は続けた。「そうではありません。もし裁判所が増額を認める判決を下せば、話は変わってきます。借地人がそれまで支払っていた地代と、正当と認められた新しい地代との差額について、判決確定後に、その不足分をさかのぼって支払わなければなりません。しかも、この差額には、年一割、つまり年十パーセントという高い利率の利息を付けて支払う必要があるとされています」。
正之はこの話を聞いて、複雑な気持ちの中にも希望を見出した。裁判が長引けば長引くほど、岡田さんが最終的に支払うべき差額と利息の総額は膨らんでいくことになる。逆に言えば、借地人にとっては、争いを長引かせることが必ずしも得策とは限らないということでもあった。弁護士は、「この仕組みを理解していれば、借地人側も早期の和解を検討する動機になり得ます」とも付け加えてくれた。
弁護士は、「この年一割という利率は、法定利率よりもかなり高く設定されており、増額請求を受けた借地人が、いたずらに裁判を長引かせることを牽制する意味合いがあると考えられています」とも説明してくれた。正之は、この制度の趣旨を理解し、感情的にならず、粛々と裁判の手続きを進めていくことにした。
一年ほどの審理を経て、裁判所は近隣の取引事例や公租公課の推移を踏まえ、正之が求めていた金額に近い水準での地代増額を認める判決を下した。岡田さんは、判決確定後、これまでの地代との差額に加えて、年十パーセントの利息を上乗せした金額を、正之にまとめて支払うことになった。一年分の差額に高い利率の利息が積み重なった結果、岡田さんが最終的に支払った金額は、当初想定していたよりもかなり大きなものになった。
この経験を通じて正之は、地代改定をめぐる争いには、単なる金額の多寡だけでなく、時間の経過に伴う利息という要素も絡んでくることを学んだ。借地人にとっても地主にとっても、早期の解決を目指すことが、結果的に双方の負担を軽くすることにつながるのだと、正之は今回のことで実感している。判決から数か月後、正之と岡田さんは改めて顔を合わせ、今後は地代の見直し時期をあらかじめ取り決めておくことで合意し、同じような争いを繰り返さないよう工夫している。
学びのボックス
| 地代増額請求中の暫定支払い | 増額を正当とする裁判が確定するまで、借地人は自分が相当と考える額の地代を支払えば足り、それ自体は違法にならない。 |
| 判決確定後の差額精算義務 | 裁判所が増額を認めた場合、借地人はそれまでの地代との差額を、判決確定後にさかのぼって支払う義務を負う。 |
| 年10%の高利率の利息 | 差額には年1割(年10%)という法定利率よりかなり高い利息が付され、これを合わせて支払う必要がある。 |
| 高利率の趣旨 | この高い利率は、借地人が増額請求を不当に引き延ばすことを牽制する意味合いがあるとされる。 |
| 早期解決のメリット | 裁判が長引くほど差額と利息の総額が膨らむため、双方にとって早期の解決が望ましい。 |




