[学ぶ・知る]ものがたりで底地借地を学ぶ知るシリーズ
【最新動向:底地の評価減対策】 東京都内で先代から底地を受け継いだ地主・山本浩二(62)は、顧問税理士から相続税対策の提案を受けていた。所有する底地は旧法借地権が設定された古い契約が多く、更地価格に対する借地権割合が高いため、相続税評価額がかさんでいた。山本には子どもが二人おり、いずれ底地を引き継がせることを考えると、生前のうちに評価を下げておきたいという思いが日に日に強くなっていた。試算では、対策の有無で納税額に数百万円単位の差が出るとも言われ、山本は決断を迫られていた。 税理士から示された対策の一つが、借地契約を「新法」つまり借地借家法に基づく契約へ切り替えることだった。存続期間や更新のルールがより明確になり、将来的には定期借地権への移行も視野に入れられるという。定期借地権であれば契約期間の満了時に確実に土地が返還されるため、底地の評価はさらに下がる可能性がある。理屈のうえでは地主にとって望ましい話に思えたが、山本自身、長年の借地人との関係を壊したくないという迷いも抱えていた。 実際に借地人へ打診を始めると、反応は芳しくなかった。旧法借地権のもとで数十年暮らしてきた借地人にとって、契約の切り替えは「更新拒絶の布石ではないか」「いずれ立ち退きを迫られるのでは」という不安を呼び起こすものだった。山本が良かれと思って持ちかけた話し合いは、かえって借地人側の警戒心を強める結果となり、一部の借地人とは連絡すら取りづらくなってしまった。噂が地域に広まり、他の借地人からも次々と問い合わせが寄せられる事態となった。中には契約書のコピーを持って弁護士に相談に行った借地人もいたという。 事態を重く見た山本は、借地権に詳しい弁護士に相談することにした。弁護士からは、契約変更はあくまで借地人の合意があって初めて成立するものであり、評価減という地主側の都合を先に持ち出し切り替えを迫るような進め方は、かえって交渉を長期化させトラブルの火種になると助言された。まずは老朽化した建物の建て替え承諾や地代の見直しなど、借地人にとってもメリットのある提案から会話を始め、時間をかけて信頼関係を築くべきだという指摘だった。急いで結論を求めないことが、遠回りに見えて最も確実な道筋だとも言われた。 弁護士の助言を受け、山本は個別に借地人を訪ね、契約の背景や今後の生活への影響を丁寧に説明することから始めた。急がず時間をかけて対話を重ねた結果、一部の借地人とは建替え承諾料の受け取りを条件とした契約内容の見直しに、また一組の借地人とは代替わりのタイミングで定期借地権への移行に、それぞれ合意することができた。山本は「税務対策である以上に、まず相手の暮らしを尊重する姿勢が欠かせないと痛感した」と振り返っている。急いては事を仕損じると学んだ一件だった。学びのボックス
| 旧法借地権・新法借地権 | 旧法は借地人保護が強く更新が原則継続。新法(借地借家法)は契約内容がより明確 |
| 定期借地権 | 契約期間の満了で確実に土地が返還される借地権。底地の評価減効果が大きい |
| 底地の相続税評価 | 借地権割合が高いほど底地の評価は下がる仕組み。契約内容の見直しが評価に影響する |
| 交渉の進め方 | 評価減目的を前面に出さず、建替えや地代見直し等、借地人側のメリットから対話を始める |




