『地代の遅延損害金』支払いを滞納する借地人への督促マニュアル
中島正輝が地主として貸している土地には、飲食店を営む借地人の男性が建物を建てて商売をしていた。ところがここ数か月、地代の入金が滞りがちになり、気づけば三か月連続で未払いのままになっていた。督促の電話をかけても、「今月はちょっと厳しくて。来月にはまとめて払うので」と、のらりくらりとした返事が続くばかりだった。長年地代の支払いに問題のなかった相手だっただけに、正輝は事態を軽く見ていた面もあった。
正輝は当初、「多少の遅れくらいは大目に見よう」と考えていたが、三か月分がまとまると、金額としても決して小さくない負担になっていた。しかも借地人からは、いつ支払うのかという具体的な見通しすら示されない。正輝は不安を募らせ、弁護士に相談することにした。
「まず大切なのは、口頭での督促だけで済ませず、内容証明郵便で正式に履行の催告をしておくことです。いつまでに、いくらの滞納地代を支払うようにという内容を明記し、証拠として残る形で通知します」。弁護士はそう説明した。正輝はこれまで、電話や対面での催促しかしておらず、記録として残る形での請求はしていなかったことに気づかされた。
「地代滞納を理由に契約を解除するためには、単に支払いが遅れているというだけでは足りません。借地契約のような継続的な契約関係では、当事者間の信頼関係が破壊されたと認められるだけの事情が必要だとする、いわゆる信頼関係破壊の法理が適用されます」。弁護士は続けた。「一般的な目安として、三か月から六か月程度の滞納が続き、かつ催告をしても支払いの意思が見られないような場合には、信頼関係が破壊されたと判断されやすい傾向にあります」。
正輝は、今回のケースがまさにその目安に近づいていることを実感した。「ただし、これはあくまで目安であって、絶対的な基準ではありません。借地人側の一時的な資金繰りの悪化なのか、支払う意思そのものが乏しいのかといった事情も、総合的に考慮されます」と弁護士は付け加えた。滞納の期間だけでなく、これまでの支払い経緯や、督促に対する借地人の反応の仕方も、重要な判断材料になるという。
弁護士のアドバイスを受け、正輝はまず内容証明郵便で、滞納地代の総額と、二週間以内に支払うよう求める催告書を送付した。催告書には、期限内に支払いがなければ契約を解除する旨も明記した。さらに、遅延損害金についても契約書の定めに従って請求できる旨を、あわせて記載しておいた。借地人はこの正式な通知を受けて態度を一変させ、慌てて連絡をよこし、分割での支払いを申し出てきた。
正輝は弁護士とも相談のうえ、借地人の事情にも一定の配慮をしつつ、滞納分の支払い計画と、今後の地代を確実に支払うことを盛り込んだ合意書を取り交わすことにした。結果として契約解除にまでは至らなかったが、内容証明郵便による正式な催告があったからこそ、借地人も真剣に向き合わざるを得なくなったのだと、正輝は感じている。
この経験を通じて正輝は、地代滞納への対応は、感情的な督促を繰り返すだけでなく、法的な手続きを踏まえて段階的に進めることの重要性を学んだ。信頼関係破壊の法理という基準があることを知っておくだけでも、いざというときの交渉の進め方が大きく変わるのだと、正輝は今回のことで理解した。以来、正輝は地代の入金を毎月きちんと確認する習慣をつけ、少しでも遅れが見られた際には、早い段階で書面による連絡を入れるようにしている。
学びのボックス
| 内容証明郵便による催告の重要性 | 口頭の督促だけでなく、証拠として残る内容証明郵便で正式に催告することが、後の対応の土台になる。 |
| 信頼関係破壊の法理とは | 賃貸借契約の解除には単なる滞納だけでなく、当事者間の信頼関係が破壊されたと認められる事情が必要とされる法理。 |
| 解除が認められやすい滞納期間の目安 | 一般的に3か月から6か月程度の滞納が続き、支払いの意思も見られない場合、信頼関係破壊が認められやすい。 |
| 総合的に考慮される事情 | 滞納期間だけでなく、これまでの支払い経緯や督促への反応の仕方なども判断材料になる。 |
| 遅延損害金の請求 | 契約書の定めに従い、滞納地代とあわせて遅延損害金も請求できる。 |




