ものがたりで底地借地を学ぶ知るシリーズ
田中義博(54歳)は、二十年前から借りている土地の上に自宅を建てて暮らしている。子どもたちも独立し、そろそろ老後の住み替えを考え始めていた。候補は、娘の住む地方都市への移住だ。問題は、今の家と借地権をどう処分するかだった。
借地権を持ったまま家を空き家にするのは現実的ではない。地代を払い続けながら、誰も住まない家を維持するのは負担が大きい。かといって、借地権は土地の所有権ではないから、普通の不動産のように売れるのだろうか。
不動産の専門家に相談すると、借地権の売却は可能だが、条件があることを教えてもらった。
「借地権は財産として第三者に譲渡できます。ただし、地主の承諾が必要です。地主の承諾なしに借地権を譲渡すると、借地契約の解除事由になります。まず地主の方に相談して、承諾を得ることが最初のステップです」
「地主が承諾してくれなかった場合はどうなりますか」
「その場合は家庭裁判所に申し立てて、『借地非訟』という手続きを利用できます。地主の承諾に代わる裁判所の許可を求めるものです。第三者への譲渡が相当と認められれば、地主の承諾なしに売却が可能になります。ただし手続きには時間と費用がかかりますので、まずは地主との話し合いを尽くすことが大切です」
「地主が承諾してくれる場合、お金はかかりますか」
「承諾料が発生するのが一般的です。相場は借地権価格の十パーセント程度とされています。たとえば借地権価格が二千万円なら、承諾料は二百万円程度が目安です。金額は交渉によって決まりますので、専門家を間に入れて進めることをお勧めします」
「買い手はどうやって見つければいいですか」
「借地権付き建物の売買を扱う不動産会社に依頼するのが一般的です。借地権物件に精通した業者を選ぶことが重要です。地主の承諾と買主の選定が同時進行になることも多いため、早めに動き出すことをお勧めします」
義博は地主の鈴木さんに連絡を取った。鈴木さんは高齢で、息子が管理を引き継いでいた。息子の健一さんに事情を説明すると、「父も高齢で管理が大変になっていますし、むしろこちらが底地を買い取ることも検討できます」という意外な返答が来た。
協議の結果、健一さんが借地権を買い取り、底地と合わせて完全な所有権にするという方向で話がまとまった。義博は借地権の売却代金を得て、娘の住む地方への移住資金に充てることができた。
借地権は第三者に売ることができる。ただし地主の承諾が必要で、承諾料も発生する。まず地主に相談することが、スムーズな売却への近道だ。地主と借地人の双方にとってよい形を探すことで、思わぬ解決策が生まれることもある。
【この記事で学べること】
借地権は第三者へ譲渡できますが、地主の承諾が必要です。承諾料の相場は借地権価格の10%程度。地主が拒む場合は「借地非訟」で裁判所の許可を求めることもできます。まず地主への相談が第一歩です。




