ものがたりで底地借地を学ぶ知るシリーズ
林孝司(59歳)は、父から底地を相続した際に一つの疑問を持った。不動産業者に底地の評価を聞くと、「更地価格の三十パーセント程度」という数字が出てきた。自分が所有している土地なのに、なぜそんなに低いのか。
専門家に相談すると、底地の評価の仕組みを丁寧に教えてもらった。
底地の評価が低い根本的な理由は、土地の上に他人の借地権が設定されており、地主が自由に土地を使えないからだ。売ろうとしても買い手は限られ、自分で建物を建てることも、更地にすることもできない。こうした制約が、底地の経済的価値を大幅に下げている。
相続税の評価においても、底地は独自の計算方法が用いられる。計算式は「底地の相続税評価額=自用地評価額×(一-借地権割合)」だ。自用地評価額とは、借地権などの制約がない更地として評価した金額のことで、路線価方式または倍率方式で計算される。そこから借地権割合を差し引いた残りが底地の評価額になる。
借地権割合とは、土地の価値のうち借地権が占める割合のことだ。国税庁が地域ごとに設定しており、路線価図や評価倍率表に記載されている。都市部の住宅地では六十パーセントから七十パーセントが一般的で、商業地では八十パーセントに設定されているエリアもある。
たとえば、自用地評価額が五千万円で借地権割合が七十パーセントの土地なら、底地の相続税評価額は五千万円×(一-〇・七)=一千五百万円となる。更地の三十パーセントの評価額になるわけだ。これが「底地は評価が低い」と言われる理由だ。
「底地の評価が低いということは、相続税の負担も少ないということですか」と孝司は聞いた。「そうです。底地は自用地と比べて相続税評価額が大幅に低くなるため、相続税の負担が軽減されます。ただし、資産として売却しようとすると、市場価格も評価額と同様に低くなります。相続税は安く済むが換金しにくい資産、というのが底地の特徴です」
「底地の価値を高める方法はありますか」という問いに、専門家はこう答えた。「借地権を買い取って完全所有権にすることが、最も確実な方法です。底地と借地権を合わせれば、自用地としての価値が回復します。借地人と交渉して買い取るか、お互いに売却して代金を按分するかという方法があります。底地のまま保有し続けるより、整理することで大幅に資産価値が上がるケースが多いです」
孝司は父が残した底地の評価額を改めて確認し、借地人との関係も振り返った。長年の信頼関係がある今こそ、将来に向けた話し合いを始める好機かもしれない。底地の仕組みを理解することが、次の一歩への確かな準備になると感じた。
底地は相続税評価が低い半面、換金しにくいという二面性を持つ資産だ。評価の仕組みを正しく理解した上で、専門家と一緒に最適な管理・活用方針を検討することが大切だ。
【この記事で学べること】
底地の相続税評価額は「自用地評価額×(1-借地権割合)」で計算します。都市部では更地の30%程度になることも。相続税の負担は軽い反面、換金しにくいのが底地の特性です。借地権の買取で資産価値を高める方法もあります。




