一物五価は、一つの土地に五つの異なった価格があることをいいます。
五つの価格というのは「実勢価格(時価)」「公示地価」「基準地価」「路線価(相続税評価額)」「固定資産税評価額」を指します。
土地の価格が一つでない理由は、国や地方自治体、売買を行う人、それぞれが違った視点や尺度にもどついて土地の価値を評価しているからです。
5つの価格について
1実勢価格(時価)
実際の(売買)取引される価格。
2公示地価
「公示価格」とも呼ばれ、地価公示法に基づいて、国土交通省が毎年調査・公表する価格。
3基準地価
「都道府県基準地標準価格」とも呼ばれ、国土利用計画法に基づいて、都道府県が毎年調査する価格(公表については国土交通省)。
4路線価
「相続税路線価(相続税評価額)」とも呼ばれ、国税庁が毎年調査・公表する、市街地等において、公衆が通行する道路(路線)に付けられた価格(公示地価の8割が目安)。
5固定資産税評価額
「固定資産税路線価」とも呼ばれ、固定資産税等を算出するための基準となる評価額(公示価格の7割が目安)。
このように、すべて同じひとつの土地の価格を指しているにもかかわらず、金額はバラバラです。ここでは、5つの土地価格の違いについてくわしく解説していきます。
5つの価格のポイント
実勢価格(時価)
実際に不動産市場で取引される価格であり、実際の取引が成立する価格のことを指します。時価ともいわれ、売主と買主の当事者間で決定される価格です。実際に成約した場合には、その成約価格が実勢価格になり、取引が行われていない場合には、他の公的な評価や周辺の取引事例から推定をして算出、もしくは不動産鑑定による評価額がこれにあたります。
地価公示(公示価格)
地価公示は、国土交通省の土地鑑定委員会が、地価公示法に基づいて、鑑定評価員(不動産鑑定士)による鑑定評価をもとに、毎年1月1日時点の標準地の1㎡あたりの正常な価格を公表するものです。毎年3月下旬に発表されます。
すべての土地を評価することは現実的には難しいので、その地域の代表的な地点の土地(標準地)を選定して、その標準地の価格を公表することとしています。
そもそも地価公示の目的は、土地取引を行う際の売買価格の指標にしてもらおうというものです。不動産の取引価格というものは秘匿性がとても高く、情報が手に入りにくいものです。そこで公的機関が、公正な評価額の指標を示すことで、不動産取引の際の価格目安として利用してもらうのに役立っています。
地価調査(標準価格)
地価調査については地価公示と類似したもので不動産取引の価格目安として利用されます。ただし、地価調査は、国ではなく国土利用計画法に基づき地方自治体(各都道府県)が毎年7月1日時点の基準地の1㎡あたりの価格を公表しています。
ほかの価格は1月1日時点のものですが、地価調査では 7月1日時点の価格を示しています。(毎年9月下旬に発表されます。)
地価調査の土地(基準地)は、地価公示の標準地と異なる地点を設定していることが多いのですが、一定数については標準地と同じ地点で設定しています。そこで、地価公示と比較することで対象地域の半年毎の地価変動率を把握することができるといった点があります。
このような面から地価調査は地価公示の補完的な役割を果たすものといわれています。
相続税路線価(相続税評価額)
相続税路線価とは、相続税や贈与税を算定する際の基礎とする目的ためのもので、国税庁が毎年7月初旬に公表する「財産評価基準書」によって、毎年1月1日時点の価格を示めしています。
相続の際などに、相続税評価額を算定する場合には、「路線価方式」と「倍率方式」という2つの算出方法があります。
市街地の宅地で「路線価方式」を使用して算出する場合に、この相続税路線価を利用します。
「路線価」といわれるものには、この「相続税路線価」と「固定資産税路線価」がありますが、一般的に単に路線価というときは、この相続税路線価をさします。
固定資産税路線価(固定資産税評価額)
固定資産税路線価とは、固定資産税路線価の目的は、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税を算定する際の基礎にするためのものです。
市町村(東京23区は都)が、3年に1回、4月~6月ごろに発表します。
固定資産税路線価は毎年ではなく3年に1回発表されます。また、算定する価格の基準日ですが、基準年度の前年の1月1日となります。直近でいうと(基準年度)2021年4月〜6月に発表され、発表された価格は(価格基準日は)2020年1月1日時点のものになります。
3年に1度、資産を評価し直すこととされており、これを「評価替え」と呼びます。原則として3年間評価額は変わりませんが、価格の基準日から地価が下落した場合に限り、「下落措置修正」いって地価の下落状況を評価額に反映することができる措置が講じられます
価格の関係
五つの価格「実勢価格(時価)」「公示地価」「基準地価」「路線価(相続税評価額)」「固定資産税評価額」の価格についてはある程度ですが関連性があります。
1 地価公示と地価調査による価格は同水準
2 相続税路線価は、地価公示および地価調査による価格の概ね80%
3 固定資産税路線価は、地価公示および地価調査による価格の概ね70%
それぞれ算出方法は異なるものの、このように価格について関連性があります。
ここでは土地について5つの価格があることを「一物五価」としておつたえしてきましたが、地価調査を除いて、「一物四価」と整理されることもあります。
土地の価格には色々ありますが、価格のそれぞれに目的があること、そしてある程度において価格に関連性があるということを知っていただけたらとおもいます。