物権と債権の違いについて
借地権の地上権と賃借権について話がでる際に、この違いを物権(地上権)と債権(賃借権)の違いとして説明されることが多々あります。
普段目にすることのないこの物権と債権について、他でも説明されているものありますよね、これをなんど読んでも、理解できたようなできていないような。。。というのが正直なところ。ですので、これの違いについて再度説明していきます。
まずは物権に該当するものとして、地上権の他に、民法で定められているのは、所有権のほか、地役権(他人の土地を自己の土地のために供し得る権利)、抵当権(優先的に弁済を受ける権利)、占有権(物に対する事実上の支配により認められる権利)などであります。また、慣習法上の物権も判例により認められており、温泉権や流水利用権はこれに当たります。
債権にあたるものとしては、契約に基づくもので(契約債権)売買代金請求権、賃料請求権、給与債権等がある。また、法律上当然に発生する債権を「法定債権」ということがあり、例として自動車事故を起こした際に法律効果として、被害者側に「損害賠償請求権」という 債権が発生し、加害者に「損害賠償義務」という債務が発生するのである。
物権と債権の共通点としては、財産権であるということが挙げられます、財産を支配する権利ということですね。
物権は、すべての人に対して権利を主張できる絶対的な財産支配権であるのに対して、債権は、特定の人にある要求をする権利であって第三者には権利を主張できない相対的な請求権である。このように、物権の基本的な性格は、その絶対的排他性にあり、典型としては所有権があります。
物権と債権の違いについて
ここで物権と債権の違いについて表にまとめました。
物権と債権の比較表
物権 | 債権 | |
1 |
物を直接支配する権利 |
債務者(人)に行為を請求する権利 |
2 |
絶対的権利 (全ての人に主張することができる) |
相対的権利 (債務者に対して主張することができる) |
3 |
排他性がある (同じ物の上に同じ内容の物権は成立しない) |
排他性がない (同じ物の上に同じ内容の債権が成立しうる) |
1.支配と請求
- 物権
物を支配する権利であるため、物への支配が侵害された場合には排除し、支配を回復することができます。
例えば、所有する土地に、何の権利もない者が建物を勝手に建てて居住している場合、所有者は土地の所有権を侵害している相手に対し、返還請求(建物収去・土地明渡請求)訴訟を起こし、勝訴判決を得ることにより強制的に建物を撤去することが可能です。 - 債権
債務者(人)に行為の履行を請求する権利であるため、債権者は債権を介した間接的な支配にとどまります。例として、お金を貸していて、相手が返済しないからといっても無理やり取り返すことはできません。返済してと請求するにとどまります。
2.絶対性と相対性
- 物権 全ての人に対してその支配を主張することができる絶対的権利です。
- 債権 債権は特定の相手(債務者)にしか主張できない相対的権利です。
売買は賃貸借を破る 物権VS債権では、勝つのは物権となります。
A(以前の建物所有者)B(新しい建物所有者)C(賃借人 Aの建物を賃貸借契約に基づき借りている人)
CがAの建物を借りて住んでいましたが、AがBに建物を売却、新所有者BがCに立ち退きを請求した場合、Cはこれを拒否する事ができません。Cの有する賃借権(債権)は相対的な権利であり、契約を交わした旧所有者Aに対してしか主張できないためです。すなわち、新所有者Bに対してCは対抗力を有しません。これを「売買は賃貸借を破る」といわれる所以です。(ただしこれについては、現実には賃貸借について「借地借家法」により保護されており、立ち退きを請求されてもの拒むことが可能です。)
3.排他性
- 物権 同じ物の上に同じ内容の物権は複数存在しません。つまり、物権には排他性があるということができ、一物一権主義ともいわれます。
- 債権 同じ物の上に同じ内容の債権が複数存在し得ます。
例えば、新幹線の指定席や、映画館の席の予約があったとします。予約システムのエラーで2人の方がたまたま同じ席を予約したのですが、予約がとれてしまった場合、どちらの方もこの席に座れる権利がある状態です。ですが実際のその席は一つしか無いため現実にそこに座れるのは一人の方のみとなります。このときのチケットでこの席にすわれる権利が債権で、現実の席に座れるのが一人のみというのが物権のイメージです。
物権(地上権)と債権(賃借権)の違いについて少しでも理解できる点がふえていたなら嬉しい限りです。