借地権の登記
目次
- 借地権の登記方法
土地の権利部乙区への登記(地主が所有する土地部分への登記)
建物の登記(自分が所有する建物部分の登記)
- 借地権で登記が必要なとき
①借地権契約を締結時
②借地権を譲渡されたとき
③底地が売却されたとき
④底地と借地権が同時に売買されたとき
⑤ 相続による底地・借地権取得
⑥借地契約解消時
借地権の登記方法
土地の権利部乙区への登記(地主が所有する土地部分への登記)
「借地権の登記」を行う場合、借地契約を締結している土地の登記簿謄本(全部事項証明書)の権利部(乙区)に、借地権の項目を記載するというのが1つ目の方法です。
しかし、これには地主と借地権者が共同でその手続きを行う必要があることに加え、地主が所有している「土地の登記」に借地権に関する事項を記載する形式となります。
地主にとっては手間のかかる手続きのうえ、地主が所有している土地に「借地権の登記」をしなくてはならないという義務はないため、実際のところ地主は借地権の登記に対して協力的ではありません。
建物の登記(自分が所有する建物部分の登記)
そのため代替案として、借地権者が自己所有の建物に対して「建物の登記」を行えば、それを借地権の登記に代わるものとして法律上認められています。この建物の登記を行うことで、借地権者は借地権を第三者に対抗できるようになり、例えば地主が底地を売却したとても、借地権者は新たな地主等に対しても借地権を主張することが可能です。
しかしながら、逆にこの借地上の建物の登記を行わずに怠っていると、底地が売却されたりした場合には、借地権を第三者に対して主張できなくなってしまったりとトラブルの原因になりかねませんので、建物の登記は忘れずに必ず行ってください。
土地の権利部乙区への登記(地主が所有する土地部分への登記)
建物の登記(自分が所有する建物部分の登記)
借地権で登記が必要なとき
一般的な借地権(賃借権)では登記しないケースが多いのですが、必ずしも借地権で登記をしないわけではありません。地上権についてはもちろんのこと賃借権でも登記が必要になる状況があります。それは以下のような場合です。
- 借地契約締結時
- 借地権譲渡
- 相続による借地権取得時
- 借地契約解消時
このように譲渡や相続など契約によっては、登記を行うことになります。
借地契約を締結された土地やその土地上の建物において、登記をする必要があるのはどんな時なのか状況について詳しく見ていきましょう。
①借地権契約を締結時
借地権契約を締結し、その土地上に新しく建物を建てた際に借地権者はその建物の登記を行います。
建物を新しく建てた場合には、まず建物表題登記を土地家屋調査士に依頼して行い、表題登記を行った後、建物の所有権保存登記を行います。
②借地権を譲渡されたとき
借地権者が借地権を売却し、借地権者が変わる場合にも登記が必要です。具体的には借地権や借地権付きの建物を買ったり、親族から借地権を贈与されたりした場合が挙げられます。
なお、「借地権を売買すること」はイコール=「[建物]を売買すること」を意味します。つまり、建物に「借地権」が付随してくる形になります。建物を抜きにして借地権のみを売買することはできません。たとえ借地権を売却する相手が地主であっても同じです。
借地権付き建物を第三者に売却する場合、借地権者から第三者に建物所有権移転の登記を行います。この手続きは建物を中古で購入したときと同様ですが、借地権を第三者に売却するには地主の承諾が必要です。
地主に借地権付き建物を売却する場合も手続きは同様で、この際には土地と建物の所有者が地主で同一となるため、借地権は消滅します。
もしくはこの時、地主が建物を壊して土地を利用する場合には所有権移転登記の代わりに建物の滅失登記を行います。なお、滅失登記は表題部を消す手続きとなります。
③底地が売却されたとき
地主が底地を売却し、底地の所有者が変わる場合も同様です。地主が第三者に底地を売却した場合には土地の所有権移転登記を行います。
これにより、例えば万が一それまでと違う人物から突然地代の請求をされ、元々の地主と連絡がつかないような場合でも、謄本(全部事項証明書)を確認して底地の所有権移転が行われていることが確認できれば、底地の売却により地主が変わったと判断できます。
地主が底地を借地権者に売却した場合は、土地の所有権移転登記の結果、建物と土地の所有者が同一となるのでこれと同時に借地権が消滅します。
④底地と借地権が同時に売買されたとき
地主と借地権者が協議により、借地契約を終了しその土地を共同で第三者に売買する場合です。
この場合、土地・建物両方の所有権が同時に第三者に移転し、土地と建物の所有権が同一となりますので、借地権は消滅します。
もし購入した第三者が建物は不要という場合は建物の所有権移転登記は行わず、代わりに建物の滅失登記を行うことになります。(従前②の地主に借地権を売却し、建物を壊した時と同様です。)
⑤ 相続による底地・借地権取得
底地権者や借地権者の所有者が死亡し、相続が発生した場合、土地や建物の相続登記が必要となります。相続人から被相続人に借地権を相続した際に行う所有権移転登記です。
なお、借地権を相続する場合には地主の承諾は不要です。ただし、相続後に被相続人が借地権を引き継いだことを伝えたほうが良いでしょう。
法定相続人(法的な相続人:子供、親、その他の直系尊属、兄弟姉妹、配偶者)以外が継承する場合は「贈与」となります。贈与については相続ではなく「譲渡」扱いとなり、手続きの際に地主の承諾が必要となりますのでこの点注意しましょう。
なお、先程の相続した旨を借地人から地主に連絡する際、内容証明などで貸主に通知し、具体的に相続後に誰が借地の賃料を払うのかなども記載しておきましょう。通知後、貸主である地主から賃貸借契約書の名義書換を求められることがありますが、これについて借地人は必ず応じる義務はなく、内容証明で事足りるでしょう。
⑥借地契約解消時
借地を返還する際には借地契約を解消することになりますが、この際にも登記は必要です。これを「滅失登記」と呼び、土地に建物がないことを証明するため登記を行います。そもそも借地は、建物付きの契約以外は更地にして返還することが一般的なため、そのことを証明するための手続きです。
この滅失登記は建物がなくなった日から1ヶ月以内に行う必要があります。期間を過ぎても滅失登記をしなかった場合には、罰金(罰則として10万円以下)が科せられることもあるので忘れないようにしましょう。
まとめ
借地権の登記は、まずは地上権か賃借権であるかという点で登記が可能か否かが決まります。一般的な借地や借地付き物件などを購入した場合は、通常賃借権のため土地への登記は難しく、建物に対しての登記になります。
前述した、借地の契約時や相続のタイミングなどで登記は必要になるため、登記時に必要になる書類等を確認してみてください。それぞれの登記では必要になる書類が異なり、申請期限が設けられていることもあるため把握しておくことが大切です。
借地権をきちんと登記すれば、借地権そして建物を自身のものとして主張できるためトラブルを未然に防ぐことに繋がります。適切な方法を踏んでしっかりと手続きを進めていきましょう。