『共有の底地』変更・管理・保存の2023年民法改正ルール
中村家の三兄弟、長男の哲也、次男の学、三男の亮太は、父から底地を三分の一ずつの共有で相続した。この土地には長年、駐車場業者が賃借人として利用しており、地代収入は三人で分け合っていた。ところがある日、賃借人から「契約更新のタイミングで、地代を見直したい」という申し出があり、三兄弟の対応は真っ二つに割れた。哲也と学は値上げに応じる方向で話をまとめたかったが、亮太は「そんな重要なことを二人だけで勝手に決めないでくれ」と強く反発した。三人とも遠方に住んでおり、これまで底地の管理はほとんど哲也に任せきりになっていたことも、亮太の不満の根底にあったようだった。
亮太の言い分は、「共有物に関することは、全員の同意がなければ何も決められないはずだ」というものだった。哲也は釈然としないまま、司法書士に相談することにした。「共有物の扱いについては、令和五年に民法が改正されて、行為の性質ごとに必要な同意の範囲がかなり明確に整理されました」。司法書士はそう説明を始めた。
「共有物に関する行為は、大きく三つに分類されます。一つ目は『変更行為』で、共有物の性質や形状を大きく変えるような行為を指し、これは共有者全員の同意が必要です。二つ目は『管理行為』で、共有物の利用や改良に関する行為を指し、持分の価格の過半数で決定できます。三つ目は『保存行為』で、共有物の現状を維持するための行為で、各共有者が単独で行うことができます」。
哲也が最も知りたかったのは、地代の値上げがどこに分類されるかだった。「地代の額を見直すこと自体は、管理行為に該当すると考えられます。持分の価格に基づく過半数、つまり哲也さんと学さんの二人が賛成すれば、亮太さんが反対していても、地代改定の交渉を進めること自体は可能です」。司法書士の説明に、哲也は少し驚いた。全員一致でなければ何もできないと思い込んでいた自分の理解が、実は正確ではなかったのだと気づかされた瞬間だった。
さらに司法書士は、賃貸借契約の更新や解除についても踏み込んで説明してくれた。「令和五年の改正では、一定期間以下の賃借権の設定も管理行為に含まれることが明確になりました。土地の賃貸借であれば、五年以内の期間であれば管理行為として過半数で決定できます。今回のように既存の賃借人との契約を更新する場合も、同様に過半数の同意で進められる可能性が高いです。ただし、契約の解除については、その設定が管理行為の範囲で行われていたかどうかによって判断が変わるため、慎重な検討が必要です」。
哲也と学は、亮太の意見にも一定の配慮をしつつ、司法書士の整理をもとに、地代改定の交渉を進めることにした。亮太も、法律上の位置づけを丁寧に説明されたことで、頭ごなしに反対するのではなく、条件面について自分の意見を伝える形へと態度を軟化させていった。三人でオンライン会議を開き、それぞれの希望する地代水準をすり合わせる場も設けられた。
最終的に、三兄弟は改定後の地代水準について合意し、賃借人との契約更新を無事に終えることができた。この経験を通じて哲也は、共有物に関する意思決定には、全員一致が必要な場面と、過半数で足りる場面があることを正確に理解しておくことの大切さを学んだ。感覚的な「みんなで決めるべきだ」という思い込みだけでは、いつまでも物事が前に進まなくなってしまうのだと、哲也は身をもって実感している。以来、三兄弟は年に一度、底地の状況について定期的に情報を共有する場を設けるようになり、以前よりも風通しの良い関係を築けるようになった。
学びのボックス
| 変更行為とは | 共有物の性質や形状を大きく変える行為。共有者全員の同意が必要。 |
| 管理行為とは | 共有物の利用・改良に関する行為。持分の価格の過半数で決定できる。 |
| 保存行為とは | 共有物の現状を維持するための行為。各共有者が単独で行うことができる。 |
| 賃借権設定と管理行為の範囲(令和5年改正) | 土地は5年以内など、一定期間以下の賃借権設定は管理行為に含まれ、持分の過半数で決定できるようになった。 |
| 契約更新・解除の判断 | 賃貸借契約の更新は管理行為として過半数で可能な場合が多いが、解除は当初の設定が管理行為の範囲だったかにより判断が異なるため慎重な検討が必要。 |




