『二世帯住宅への建て替え』増改築承諾料の相場
藤井健太は、父から受け継いだ借地の上に建つ平屋で、妻と二人の子供と暮らしていた。両親はすでに他界していたが、健太の妻の両親が高齢になり、そろそろ同居して支え合いたいという話が持ち上がった。平屋のままでは手狭なため、健太は建て替えて二世帯住宅にする計画を立て始めた。子供部屋も手狭になってきており、家族全員が新しい暮らし方を望んでいた。
借地契約書を確認すると、「建物の増改築には地主の承諾を要する」という条項があった。健太は地主の岡田さんに相談することにしたが、その前に司法書士に手続きの流れを聞いておくことにした。「非堅固建物である平屋から、二世帯住宅のような規模の大きな建物へ建て替える場合、契約内容によっては地主の承諾が必要になります。承諾を得る際には、一般的に『増改築承諾料』を支払う慣行があります」。司法書士はそう説明してくれた。
承諾料の相場について尋ねると、「更地価格のおおむね三パーセントから五パーセント程度が目安とされています。ただし法律で定められた金額ではなく、地域の慣行や地主との関係性によって幅があります」との答えだった。健太の土地の更地価格を路線価などから概算すると、承諾料はおよそ百万円から百五十万円程度になりそうだった。決して小さな出費ではなかったが、健太は「無断で建て替えて後からトラブルになるより、きちんと筋を通したほうがいい」と考え、岡田さんへの相談を進める決意を固めた。無断で建て替えを進めれば、契約違反として最悪の場合は契約解除を主張されるリスクもあると聞き、なおさら慎重に進めようという思いが強くなった。
健太は岡田さんのもとを訪ね、二世帯住宅への建て替えを考えている経緯と、義理の両親との同居を機に長くこの土地に住み続けたいという思いを丁寧に伝えた。設計図面や建築スケジュールも持参し、工事中の騒音や近隣への配慮についても具体的に説明した。手土産を持参し、世間話も交えながら話をする姿勢を心がけたことも、岡田さんの警戒心をやわらげる助けになったようだった。岡田さんは当初、「急に大きな話をされて」と戸惑った様子だったが、健太が承諾料の相場についてもきちんと調べたうえで、具体的な金額を提示してきたことに好印象を持ったようだった。
数回の話し合いを経て、岡田さんは建て替えを承諾し、承諾料として更地価格のおよそ四パーセントにあたる金額を受け取ることで合意に至った。当初、健太が想定していた三パーセント台よりやや高めの水準に落ち着いたが、健太は「これで気持ちよく承諾してもらえるなら安いものだ」と納得した。司法書士に依頼して、承諾の内容と金額、今後の借地条件を明記した合意書も取り交わした。書面を残しておくことで、将来、相続や売買が発生した際にも、増改築の経緯が明確になるという利点もあった。
工事は無事に完了し、健太一家と義理の両親は新しい二世帯住宅での生活を始めた。引っ越しの日には、岡田さんも新居を見に訪れ、「立派な家になったね」と声をかけてくれた。健太は、承諾料という出費を惜しむよりも、地主との信頼関係を保ちながら住まいを整えられたことに満足している。誠実に手順を踏んだことが、結果的に一番の近道だったと、健太は振り返っている。二世帯住宅での暮らしが始まって半年が経ち、義理の両親も新しい環境にすっかり馴染み、休日には家族全員で庭の手入れをするのが習慣になった。
学びのボックス
| 増改築承諾料とは | 借地契約で増改築に地主の承諾が必要な場合、承諾を得る際に地主へ支払う金銭。法律上の義務ではなく慣行に基づくもの。 |
| 承諾料の相場 | 更地価格のおおむね3〜5%程度が目安とされる。地域の慣行や地主との関係性によって幅がある。 |
| 無断増改築のリスク | 承諾を得ずに増改築を進めると、契約違反として契約解除を主張されるリスクがある。 |
| 誠実なアプローチのポイント | 建て替えの経緯や思いを丁寧に伝え、設計図面やスケジュールを提示するなど、具体的な情報を持参して相談することが円滑な承諾につながる。 |
| 合意書の取り交わし | 承諾の内容・金額・今後の借地条件を書面化しておくことで、将来の相続や売買の際にも経緯が明確になる。 |




