ものがたりで底地借地を学ぶ知るシリーズ
坂井光男(61歳)は、父から引き継いだ底地を十年以上持ち続けていた。借地人の中村さん一家とは良好な関係が続いており、毎月の地代も滞りなく払われている。ただ、底地を単独で売却しようとすると買い手が限られ、更地価格の十五から三十パーセント程度の価格にしかならないことはわかっていた。換金したいという気持ちはあるが、どう動けばいいかわからずにいた。
ある日、中村さんの息子・浩二さん(45歳)から連絡が来た。「父も高齢になり、この家を将来どうするか話し合っています。もしよければ、一度お時間をいただけますか」話し合いの結果、双方とも土地の整理を考えていることがわかった。光男も換金したい、浩二さんも売却を検討している——利害が一致していた。
専門家に相談すると「共同売却」という方法を提案された。底地と借地権を同時に第三者へ売却し、代金を双方で按分する方法だ。「底地だけを売ると、市場価格は更地の十五から三十パーセント程度になることが多いです。借地権だけの売却も、地主の承諾が必要で買い手が限られます。しかし底地と借地権をまとめて売却すると、完全所有権の土地として扱われますので、更地価格に近い金額が得られます。単独で売るよりも双方が受け取る金額が大幅に増える可能性があります」
「売却代金はどのように分けますか」という問いに、「底地割合と借地権割合に応じて按分します」と担当者は答えた。「借地権割合が六十パーセントの地域なら、売却代金の六十パーセントが借地人、四十パーセントが地主の取り分です。この割合は国税庁が定める路線価図に地域ごとに記載されており、客観的な基準として双方が納得しやすい分け方になります」
「等価交換という方法もあります」と担当者は続けた。「底地と借地権を一体化した後、土地を分筆して地主と借地人がそれぞれ完全所有権の土地を取得する方法です。売却せずに土地を手元に残したい場合に有効です。分筆後はそれぞれが自由に活用できます。ただし分筆できる広さや形状かどうかを事前に確認する必要があります」
共同売却を進める際には、まず不動産の評価額を確認することから始める。底地価格と借地権価格を客観的に算定した上で双方の取り分を明確にすることが重要だ。また、売却後の税金(譲渡所得税)についても事前に把握しておくと安心だ。底地を長期間保有していた場合、長期譲渡所得として税率が低くなるメリットがある。売却代金の手取り額を事前に試算してから判断すると、後悔のない決断ができる。専門家を早めに間に入れることで、価格交渉や手続きがスムーズに進む。
光男と浩二さんは共同売却を選んだ。専門家が買主を探し、適正価格での売却が成立した。売却代金は借地権割合に基づいて按分され、双方が納得できる金額を受け取ることができた。「早く相談すればよかった」というのが光男の正直な気持ちだった。長年抱えていた底地の問題が、借地人との協力によってこれほどスムーズに解決するとは思っていなかった。
底地と借地権の共同売却は、双方にとってメリットの大きい選択肢だ。互いの利害が一致するタイミングを見つけ、専門家を交えて誠実に話し合いを進めることが、納得のいく解決への近道になる。底地を抱えて悩んでいるなら、まず借地人との対話から始めてみることをお勧めしたい。一人で抱え込まず、早めに動き出すことが、最善の選択につながる。
【この記事で学べること】
底地と借地権を共同売却すると、完全所有権として売れるため単独売却より双方の受取額が大幅に増えます。売却代金は路線価図の借地権割合で按分します。土地を手元に残したい場合は等価交換という方法もあります。




