解決方法3 借地権の買い戻し
借地権の買い戻しとは、借地人から借地権を買い戻して、自身が持っている底地を合わせることで土地を完全な所有権に戻すことです。
所有権にすることで流動性が高まり、現金化しやすくなるなど、資産価値が高まります。
こちらについても同時売却と同様に借地人が借地権について売却の意向があることが前提となります。
ただし同時売却と異なる点は、一定の資金を投じて借地権を買い戻すことになる点、所有権化した不動産を将来に置いて保有することから、その土地を将来どのように有効に活用していくかを十分考え描いたうえで、すすめていかなければなりません。
借地権の買戻しが成立しやすいタイミングとしては次の4つです。
①借地権者が借地権の譲渡を考えているとき
②借地権者が建て替えを考えているとき
③借地権者が生前整理を考えているとき
④借地権者が亡くなって相続が発生したとき
すべて、借地人の状況がどのようであるかがポイントになります。
まず①の借地権者から借地権の譲渡について相談がある場合は話が早いです。すでに借地権者は借地を明け渡すつもりなので、説得が必要ありません。買取価格と引き渡し条件が一致すればスムーズに進みます。また、借地権の譲渡には地主の承諾が必要です。借地権者がどうしても地主にではなく、第三者に売却したいと考えて借地非訟事件手続きを取ったとしても、地主には先買権(介入権)が認められています。そのため、その第三者より優先して買い戻すことができます。
②の建替え時について。借地上の建物を建て替えるときにも地主の承諾が必要になります。さらに、建替えにかかる費用は新築と同じくらいか、状況によってはそれ以上かかる場合もあります。土地は借地権のままなので、建て替えたあとも地代や更新料、譲渡時には譲渡承諾料の支払いが必要です。今後の増改築も地主の承諾なしでは行えません。このように借地権者にも借地の利用に関する制限が多いです。
そして、建て替え時に建物は一度取り壊してしまうので、借地人も借地権を明け渡しやすいといえます。他の場所で所有権の土地を取得するための資金は必要ですが、解体も仮住まいへの引越しは建替えする場合でもかかるからです。土地の取得費用も、借地権の売却代金を充てられることから借地人にとってはメリットとなります。
③の生前整理を考えている時です。借地権も相続財産に含まれます。借地権は権利関係が複雑なだけでなく、相続税評価額は、実際に売買する市場価格よりもずっと高いので多額の相続税を課せられる可能性があるなど、トラブルの元です。そのため、生前整理を考えている借地人に借地権の買取を提案すると、成立する可能性が高いです。
④の相続が発生した時です。借地権を相続しても、その借地上の建物に住まないのであれば結果として持て余してしまいます。賃貸物件として第三者に建物を貸し出すことも可能ですが、管理に手間がかかることや、さらに相続時には相続税の拠出のこともあり、相続時は買戻しが成立しやすいです。
②の建て替えについて、建物が古くなってきたことでの建て替えを検討してる借地人さんの中には長年この地に住み続けてきた70代や80代の高齢の方がおられます。「他の地で住むことは考えておりません、長年居たこの町で住み続けたいと考えています。」という方が多いのです。若ければ他の土地へ移り住む事に対してのハードルは高くないが、年齢があがればやはり住み慣れた土地を選ぶでしょう。もし地主側が買い戻した後、その土地に賃貸住宅を建設する予定であれば借地人に借地を売却して地主が立てた賃貸住宅へ移り住んでもらうなどの提案もしてみるのも良いかもしれません。
借地権価格の査定
借地権の買戻しが成立しやすいタイミングをお伝えしました。
それでは、買い戻すときにはどれくらいの金額が必要になるのでしょうか。そもそも借地権の買戻しは土地所有者である地主と借主の借地権者、双方の同意があって成立するものです。
それぞれの土地や契約内容、買戻しの背景など様々な条件が影響するので、「相場金額」が存在しないというのが実際のところです。しかし、買戻し時の金額の目安にもなる借地権価格の査定には大きく2つの方法が存在します。
(1)借地権割合に基づいて価格査定
(2)取引事例に基づいて価格査定
(1)借地権割合に基づいて価格査定
借地権割合に基づく価格査定は、相続税課税額を算出するときにも用いられる方法です。土地ごとに借地権割合が設定されていて、路線価図で確認できます。このとき計算式は、以下の通りです。
【借地権価格 = 更地価格 × 借地権割合】
たとえば、更地価格が1億円、借地権割合が70%だった場合、借地権価格は7,000万円と査定されます。また、例えば借地権が更新のない定期借地権の場合などは残存期間も価格に影響します。算出された価格を参考にして双方で買取価格の交渉を進めます。
(2)取引事例に基づいて価格査定
取引事例に基づく価格査定は、近隣で、条件も近い借地権の売買が活発におこなわれている場合に有効な査定方法となります。
実際の取引価格をもとに、借地人・地主および土地のそれぞれの個別の事情を考慮して算出されます。しかし、借地権の売買は頻繁に行われるものではないため、取引事例を集めることは通常困難です。そのため、査定を依頼する不動産会社の借地権の取り扱い実績が豊富にある場合などがこの査定方法を利用する判断基準となります。
以上の2通りの算出された価格を参考に交渉を進めていくことになりますが、今後所有権として次の世代に渡していきたいということがゴールになりますので、相続対策をメインとして金額を算出していくことが大切です。
<<借地権の買い戻し メリット&デメリット>>
メリット
土地を所有権化することができる。
流動性・資産価値を高められる。
デメリット
時間的な余裕が必要
買い戻すための資金が必要
将来の収益性から逆算した金額での条件交渉が必要。