地主が承諾しない場合には代諾許可
ご質問 借地上の建物を第三者に譲渡したいのですが、地主が承諾しません。どうすればいいの?
結論 地主が承諾しない場合には代諾許可
借地を売却して第三者が借地権を取得する際、地主に不利になるおそれがないにもかかわらず、地主がこの譲渡について承諾しない場合には、裁判所に対し、地主の承諾に代わる許可(代諾許可といいます)を申し立てることができます(借地借家法第19条1項)。
この代諾許可を求める手続きは、裁判所において行われますが、借地非訟手続きと呼ばれる訴訟とは異なる手続きで行われます。期間は通常の訴訟よりも短く、申し立てから結論がでるまで6ヶ月程度という場合が多いです。
代諾許可申立てのポイント6つ
代諾許可申立てを行うにあたり、ポイントになるのは以下です。
1.建物が存在すること
建物が解体される等して更地になってしまっているときには、譲渡すべき建物が存在しないため、代諾許可を申し立てることができません。
代諾許可の申し立て前に、建物を取り壊したりしないよう注意して下さい。
2.建物の譲受人(買主)が決定していること
裁判所は、借地権を譲渡したとしても地主側に不利になるおそれがないか否かを判断します。そのため前提として建物の譲受人(買主)が決まっている必要があります。したがって、建物を売却したいが、まだ買い手は見つかっていないという段階では、代諾許可の申し立てをすることができません。まずは建物の譲受人(買主)候補を見つけ、売買契約を完了させる前に、裁判所に申し立てをする必要があります。
3.地主に不利になるおそれがないこと
先程から触れておりますが、地権を譲渡したとしても地主側に不利になるおそれがないか否かを判断します。例えば、建物の譲受人が地代を滞納するおそれがない(それだけの資力がある)こと。その他、譲受人が反社会的勢力(暴力団等)ではないか、建物が違法な目的に用いられないか等が判断される部分となります。
4.財産上の給付
代諾許可されるほとんどの事例において、承諾料の支払いが条件とされます。東京の場合、借地権価格の10%程度となります。
なお、譲受人(買主)が元の建物所有者の妻や子などの推定相続人である場合には、建物所有者が死亡すれば、相続により当然に取得するという立場を考慮し、借地権価格の3%程度になるようです。
5.借地条件の変更
当事者間の利益の衡平を図るために、代諾許可をするにあたり賃料等の借地条件の変更が行われることがあります。
6.地主の譲受申立(介入権)
借地人から、代諾許可申立てがなされたとき、地主側は、自ら建物の譲渡及び借地権の譲渡を受ける旨の譲受申立(介入権)をすることができます。この申し立てがあった場合、裁判所は対価を算出します。
借地借家法 第19条第1項
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。