借地の一部を駐車場として貸し出す
借地を借りているけれど建物が立っている以外のところを貸し出ししたい。相続した借地を有効活用したいので借地の一部を駐車場として貸し出しできないかというご質問を受けることがあります。
土地の賃貸借を借地人(賃借人)が地主(賃貸人)の承諾を得ずに、無断で第三者に土地を転貸することは禁じられており、賃貸人は、賃借人が無断で第三者に転貸した場合には、賃貸借契約を解除することができるとしています。(民法第612条) そして借地人(賃借人)は、土地賃貸借契約の使用目的にもどづいて使用収益しなければならず、これに従わない使用をしたときには用法違反により地主は契約の解除ができる(民法第594条)としています。
賃貸借契約は、契約当事者(地主と借地人)の信頼関係を基礎としており、賃借人が、賃貸人に無断で第三者に賃借物を使用収益させることは契約の本質に反しますし、地主にとっては転貸人の第三者がどう云う人物なのか、たとえば財産的に支払い能力のある人物なのか等自身に不利益になるかもしれないため、転貸の際に地主の承諾を必要としております。
たとえ無断転貸が契約全体の一部であり、駐車場契約の解除が容易で、原状回復が可能だとしても、借地権の本来の目的である建物所有目的の範囲内の利用と認められず、転貸に該当し、地主と借主の間の信頼関係を破壊する行為と認められる場合、契約の解除が認められます。
借地の一部を駐車場として貸出そうとする場合は、地主の承諾を得るようにしてください。そして土地賃貸借契約について住宅用地としている場合には、借地の一部を駐車場として利用する用途変更についても承諾も得るようにしておきましょう。
駐車場について地主の承諾を得られなかった場合、手続きとしては裁判所への「借地非訟手続」があり、地主にかわり裁判所に許可を求めるものです。ただし手続きとしてはあるものの借地の一部を駐車場に転貸することについて裁判所の許可を得ることは実質的には難しいと考えます。裁判所の手続きに時間も費用もかかります。地主の承諾を得られなかった際には駐車場にすることを諦めた方が良いでしょう。
借地上の建物の用途によっては特例として、地主の承諾を得ずに駐車場として貸し出しても、借地権の転貸とみなされない場合があります。
たとえば、土地の賃借人の賃貸借の目的が、飲食店、劇場等の顧客の来訪を目的とした建物所有や、アパートなどの居住用建物を所有する場合に付随して駐車スペースとして借地の一部を第三者が使用することは、建物所有の目的の範囲内の利用行為であると考えられ、無断転貸には当たらないとされています。
借地契約の内容や建物・駐車場の利用状況や必要性などによっては、無断転貸又は用法違反として土地賃貸借契約を解除されるおそれがあります。
借地を利用している場合には借地人自らの判断はせずに、地主との信頼関係も考えて事前に地主へ相談することおすすめします。もしかすると、地主は黙って勝手に駐車場にしたことを気に食わないと思っているかもしれません。一言地主に伝えるだけでも安心すると思います。今後も考えて丁寧なお付き合いをしていくことが良いと考えます。