練馬区にてご兄弟で底地を持たれていた方からもう高齢で底地を持っていると管理が大変で今後のことも考えて、買い取って欲しいと相談がありいくつかの底地をまとめて購入した中に、借地人で吉田さんという方がおられました。
何度か挨拶に伺うとご夫婦でお住まいで、お父様のほうが病気を患っており常にベッドで過ごされているようでした。
地代も毎月きちんと振り込まれており、私の仕事も忙しいことも有り顔を出さなかったのですが、改めてしばらくぶりにお伺いするとお母様と息子様がいらっしゃいました。詳しく話をお聞きすると数ヶ月前にお父様がご病気で他界されており、お母様の面倒をみにたまに息子様がお家へ寄られているとのことでした。
改めて息子様にも地主になった旨を伝え、何気ない世間話をする中で息子様は練馬の近くにお住まいをすでに購入しており、結婚はしてまだしていないとのことでした。
そこで将来のことについてもお聞きしました。
「お母様がいらっしゃいますが、今後はこちらの借地権のお宅をどうされる予定ですか?」
「私は近くに別に家がありますし、母が亡くなったら空き家になってしまいますね。人に貸すといっても、こんな古い家では借り手もないでしょうし……。
借地権というのは、権利を人に売ったりできるのですか?」
「買いたいという人がいればもちろん売れます。
ただ、ご承知のとおり、借地権を買っても地代を払い続けなくてはいけないので、あえて借地権を買おうという人を探すのは難しいでしょう。
安ければ買うという人はいますから、どうしても値段が安くなってしまいます。
調べるとわかりますがここは借地権割合が70%で、税務署の評価では更地価格の70%が借地権の価格ということになっていますが、とてもその値段では売れないと思います。
それより、いったん底地を購入して所有権にされてから売却されたほうがいいですよ。この辺りでしたら坪 130万円前後では売れそうだし、買い手も見つけやすいでしょう」
その話を聞いて息子さんも底地を購入することに前向きになられました。その後購入の件でお話しようと何度か連絡をしたのですが、それ以降電話に出てくれません。
おかしいなと思っていたのですが、しばらくして訪問しお母様とお話することができました。
お母様のお話によると、お話した当初は良かったのですが、その後どうやら息子様がご自身でされている事業が百貨店との取引のお仕事をしており、百貨店をふくめた小売業界もこの景気の中、店舗を縮小や撤退をするところも出てきてご自身の事業も危なくなってきたようなのです。
お母様からも、息子さんの状況を察して
「いったん買うということはお金が要るでしょう。いま息子もこんな状況だしそれより、おたくの会社が地主さんになられたのなら、なんとか良い条件で買い取ってもらえませんか?私は近くの息子の家に引っ越します。」
「検討させていただくことはできますが……。もし本当にこの家はもう要らないということでしたら、私どもと一緒に、つまり借地権と底地権を一緒にして100 %所有権の土地として売却する
というのはいかがでしょう。
売却代金を私どもと分ける形になりますが、そのほうが、手取り金額も多くなると思いますよ」
「それはありがたいお話です。そのお話を息子にもしてみます。」
吉田様のお宅はその後更地にして、借地人の吉田さんと私達とで一緒に売却することになりました。
地主さんと借地人さんが協力して一緒に第三者に売却するという、「借地権と底地の同時売却」という方法です。その後お母様は息子様のお宅に引っ越しされていきました。
今回は底地の購入というお話から、借地権の売却になりましたが、借地人さんにとっても代替わりのタイミングは借地の解消を考える良い機会です。
底地・借地の関係を思い切って解消すると経済的メリットも大きいため、早めの検討をおすすめいたします。何より後顧の憂いがなくなりほっと安心できます。